Piano cafe "Scherzando"     ピアノカフェ・スケルツァンド

ピアノ調律スケルツォの喫茶店。 お茶しながら ピアノと音楽の会話でくつろぎませんか。

セミ・オーバーホール YAMAHA G2  ④  我孫子市N様 完成!

相変わらずブログの更新が遅くなってしまい、すみません。

 

じつはもうN様ご新居への搬入も終わり、事後報告もいいとこなんですが続きを書いていきます。 N先生、ほんとにすみません… ( ノД`)… オロロロロ

気を取り直して報告の続き。

アクションを鍵盤と打弦機構とばらし、各々ファイリングや清掃をいたしました。

 

鍵盤とバランス・フロントピンの研磨。

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上の写真、左が作業前、右が研磨作業中の写真です。小口がきれいになっています。

 

 

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バフグラインダーを使って鍵盤の表面を研磨し、バランスピンも一本一本磨き入れをしていきました。 しかし、作業に夢中になり、すっかり研磨後のピカピカにしたピンの写真を撮るのを忘れてしまった!

ヽ(;´Д`)ノ

 

ピアノ調律スケルツォは、調律にお伺いする際、特に鍵盤の拭き上げ、バランスピン磨きに精をだします。 

弾き手が唯一触れるのが鍵盤。 これがよく見ると白鍵は奥の黒鍵との境目、黒鍵は側面がひどく汚れていて、ただこれを「綺麗」にする、それだけでとても弾き心地のよいピアノになるのです! 

こういう作業こそ大事にしなきゃいけないんだなぁ、と戒められる作業大事な作業で、長年続けていればこうしたことにもいくつか工夫が生まれたことが自慢です。

 

 

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話は変わりますが、我が家の洗濯機がぶっこわれ、急遽買い替えるハメに。 

ちょっと前には電子レンジにトースター、

その前は給湯器…、 

もう家電を買うためだけに働いてるのかと嘆きながら買い物に向かう車中でのこと。

 

軽い渋滞で、側道を走る自転車のアニキと抜きつ抜かれつを繰り返していたのですが、そのアニキ、髪型といいファッションセンスといい、あまりにアバンギャルドでエキセントリックでパンデミックだったのでおもわず写メしちゃいました。 

 

アニキ、吉野家さんへGO!

へそ出しルックで食す牛丼のお味はいかに。

食事もセンスもつゆだくが一番なのら!

 

本編に戻ります。

グランドピアノのクリーニング作業で一番大変なのは… なんといっても譜面台。

たいがいご自宅のグランドピアノは左側面を壁にぴったりつけているもので、ボディはそんなに汚れたり傷ついたりすることが少ないのです。

そのかわり、楽譜やペンなど物置替わりになるのが譜面台で、ここにつく傷が深いのでキズ消しが大変です。 

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 G2-製造番号70万台。

製作当時は蝶板の真鍮ネジがすべてマイナスで、しかも固着して外そうとするとネジが折れそうで怖い。

当時はネジ規格もあいまいで、いくら小さいマイナスドライバーでも入らないほどネジ溝が細い。

 

蝶板を交換するのが常ですが、さすがにこの度は…と凹みかけていたのですが、以前、こういう時のために削って薄くしたマイナスドライバーを駆使し、慎重にチビトンカチでコツコツ叩きながら外すことに挑戦しました…

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やったー!  ふぅ。 (写真を確認したら全部ピンボケですみませぬ)

一つもネジを折らずに外すことができましたぜ!

無事、新品に交換です。

むろんネジも新品に交換。

実際に演奏とは関係ない箇所ではありますが、ないがしろに作業すると思わぬ雑音の原因になってしまいます。

 

そんなこんなでピアノの磨き上げ・修理とすべての下準備が整いました。

この日はこれで終了。

 

翌日、整調(タッチ調整)、調律を施し、最後に整音をいたしました。

・ダンパー調整

・べディング(筬と棚板の密着)、

・鍵盤調整、・ナラシ・アガキ、・打弦距離、・レペティションスプリング、・ジャック位置、・レットオフ、ドロップ調整

タッチ調整と一口に言ってもこの作業工程は実に20以上。当然ながら88鍵すべてにそれを施し、均一にそろえていきます。 

調律(音律合わせ)はこの作業にくらべて氷山の一角です。

 

鍵盤は、オン・オフのスイッチではなく、弾き手の指先で音に色彩をあたえるもの。

ここに心血を注ぐことに日々過ごす調律師の一人として、末永くピアノを愛していただけるよう努め仕上げました。

 

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 一人で黙々と作業しているとついつい写真を撮り忘れてしまいます。

 

精一杯作業させていただきましたが、毎度ながら「ご満足いただけるかな」という不安がついてまわります。

そういう不安に苛まれるくらいなら妥協せず、

「他のひとだったらもっと綺麗に仕上げてる」とか、

「腕のいい調律師ならもっと丁寧に仕事をしてる」とか、

聞こえる心の声に立ち向かってただただ頑張り、もうここまでやれば悔いはない、というところまでやるしかありません。

 

…先日、ピアノの発表会に出場してきました。

人前でピアノを弾くというのは大変に緊張感の伴うことです。

こんな素人の演奏など誰が期待するわけでもなく、怖がることなどないのに、実際ステージにあがって、照明の中一人演奏をする「非現実」な空間。

いや、出番が近づくときが一番怖いかな。

膝、指が震え、いつもなら間違えるはずもない箇所でつまずこうものなら、なにをどう弾いていいのかわからなくなる恐怖といったらありません。

逃げ場もなく、取り乱すことも許されない場面を知っている人ならお分かりいただけるとおもいます。

あんな思いはしたくないなら方法は二つ。

練習を重ねて自信を構築するか、もう二度とやらないか、です。

 

お預かりして作業したピアノをお届けするときというのは「発表会の怖さ」と似た感覚が少しあります。本当にご満足いただけるのか、がっかりされたりしないのか、と。

 

毎度ながらそれも杞憂におわり、ご新居への引っ越しに合わせて無事に搬入させていただけました。 

 

N先生はピアノの先生。 

とっても素敵な音楽室でございました! 音響を考慮し、なんと壁は微妙な角度をつけて直角になってないとのこと。すごい。

かっちょよくて防音も完璧。 わたしはピアノの先にある窓からの風景が素敵で印象的でした。

素直にうらやましい。

 

運送・搬入で揺られ、ちょっと狂った音律を整えたら私の作業は終了。

ご主人もご一緒にお茶をいただき、音楽・音響にまつわる楽しいお話をおうかがいし、ついつい長いしてしまいました。

 

N様、この度はご依頼をいただきましてありがとうございました。

練習したいときはいつでも来て! というお言葉。

うれしかったです。

 

また次回の調律、よろしくお願いいたします!