Piano cafe "Scherzando"     ピアノカフェ・スケルツァンド

ピアノ調律スケルツォの喫茶店。 お茶しながら ピアノと音楽の会話でくつろぎませんか。

セミ・オーバーホール  ヤマハ・U3H ①  世田谷区S様

ピアノの場合、オーバーホールというと弦の交換まですることを言うのが一般的です。 しかし、それは一台ピアノが買えてしまうくらいの金額になってしまいます。

 

ピアノ調律スケルツォでは、お預かりしたピアノを、ただきれいにするのではなく、修理できるところは極力交換パーツを抑えて、コストを抑えて、蘇らせる…

 

それを、「ピアノクリーニング」ではなく、「セミ・オーバーホール」と銘打って作業させていただいております。

 

さて、この度「セミ・オーバーホール」させていただくのは、ヤマハ・U3H。

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お引取りする現場が、住宅街の奥まった御宅で、しかも搬出するのにもクレーンが使えない2階。

すべて手作業で下ろすという作業でございまして、梅雨の時期あいまって、お預かりするまで大変時間がかかってしまいました。

お待たせしてしまい、本当に申し訳ありません。

 

親子2代、いやこれから3代でお使いになる、思い出のつまったピアノ、作業開始が遅れた分、精一杯作業いたします。

 

しかし、状態を拝見すると、これは直し甲斐がありそうな予感!

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↑㊧:アクションのフレンジコード、ほぼ全滅!  

↑㊨:それによって、二次被害であるバットスプリングの折れ曲がりがたくさん。

 

 

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↑㊧:鍵盤の小口。 膨張してふくらんでます。

小口とは、白鍵の上面ではなく、垂直に向いてる正方形の部分です。

 

↑㊨:鍵盤上面のよごれ。  ピアノを習い始めたときに書いたのでしょうね。

どこか懐かしいようなかんじがします。

 

このたびは、鍵盤の作業からはじめます!

 

 

 

 

工具がこわれたら

アクションの整備がひとしきり終わり、ハンマーを取り付けいていたときのこと。

 

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 バットプレートという箇所にあるマイナスの小さいネジをしめていたら、めきゃっと嫌な感触がありました。 なめしたか…それともバカネジにしてしまったか…

 

でもちゃんと固定されてるので、ためしに次のネジをしめてみるとなんかヘン。

よく見ると…ドライバーの先端が欠けていました。

 

まいったなぁ、 といっても、不測の事態に備えすべての工具は二つ以上もっているので作業には差支えありませんが、なんかすぐ直したくなりました。

久々にグラインダーを引っ張り出し、

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コイツで先端を削ります。

グラインダーで,、かたちを整えるには、細かく何度も修正するのはぜったいダメ。

角度を決め、固定したら一発で削り上げるのです。

 そうしないと、いつまでたっても出来上がりません。

 

 

 

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 ちなみに ↑ 写真㊧は、昔から使ってた研石。 使いこんだ左の研石、刃物を研ぐにはもう使えないけど、細かいものを削るときには重宝です。

 

 だいたい15分くらいで、すべて終了。

マイナスドライバーは、厚みの調整が重要なポイント。

最初は苦労しましたが、慣れると新品同様に直せます。 写真㊧、 2本のうち下が直したドライバーです。

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 試してみたら、これがバッチリ!

どやさっ!

たかだか安いドライバー一本ですが、これでまた愛着をもって使えます。

 

 

セミ・オーバーホール  ヤマハ・U2G ①  白井市T様

 

9月ころまで保管している最中、ピアノ・クリーニングをお任せいただきました。

 

ヤマハU2

 

私が生まれた頃から家にあったのと同じモデルなんです。

 

この度、作業させていただくこのピアノ、外装は比較的きれいで傷も少ない…

が、そうとう弾き込まれてます。

マフラーフェルト(真ん中のペダルを踏んでミュートするところ)が弾き過ぎて穴が空いちゃってます。

鍵盤には爪の引っかき傷がつきますが、その傷もけっこうありました。

(※写真で撮っても分かりづらいため掲載しておりません。)

 

こういう状態のピアノを見ると、ほんと関心します。

だってそれだけピアノの練習に励んだんだから。

そしてピアノを大事になさってたのがよくわかるからです。

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とはいえ、やはり塗装面のくすみ、ペダルや蝶番・弦の錆び、付着してなかなか落ちない汚れなど、経年劣化は否めない。

すべてを磨きいれ、きれいに響くピアノにしていきます。

さぁ、 気合をいれて頑張ります!

 

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この作業は、お引っ越しのご都合もあり、 保管もかねて9月くらいまで時間を頂いております。

 

 

 

セミ・オーバーホール   ヤマハ・UX5 ③ ひとまず完成!

調律の合間に作業をさせていただいているので、すっかり遅くなってしましました。

 

じつはこうしてブログを書いている時点でとっくに完成しており、次のピアノの作業にとりかかっていたりするのですが、多少の時間差はお許し願いたく存じます。

 

 さて、UX5の作業。

・ピアノの外装の磨き上げ

・内装 → 弦やピン類の錆落し、汚れ落とし

・アクションの整備(これはアクションのオーバーホールといってもいいとおもってます)

・鍵盤上面の研磨およびガタツキ補正

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↓ あまりに目立つ傷があったものですから、リペアをサービスさせていただきました。

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こうした作業を終えてピアノを組み上げました。

ようやく整調作業と調律。

下の写真をみてお分かりいただけますでしょうか?

鍵盤を押し、アクションを介して弦を叩くフェルトハンマー。

これはまっすぐ正確に弦を打つものでなければなりません。

なのにそのハンマーの間隔が不ぞろい、斜め打ち、とにかくばらばらです。

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↓ グランドピアノでいうところのサポート合わせ。
ジャックの突き上げがそうとうずれているのでここも修正。

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こんなかんじで作業をひとまず終えました。

調律も、じつは「半音下がり」と呼ばれるほど音が落ちており、

中音部は、「ド」が「シ」になってたり、低音側も高音側もなにがなんだかわからない状態の音でしたので、しっかり調律させていただきました。 

しかし、本当の仕上げはお客様宅に運び込まれ、運送で狂った音律を再度調律し、ご確認いただいて、すべての作業が終了します。

楽しみにしていたぶん、喜んでもらえるといいけど…。

 

 

セミ・オーバーホール   ヤマハ・UX5 ②  千葉市 N様

アップライトピアノは、音の鳴る箇所が密閉されているという、不思議な構造です。

グランドピアノはあの大きい蓋を開けて演奏するのに、

アップライトピアノにはそれがない。

 

アップライトピアノも、天屋根(上のまくり)を開けれられるのですが、すこしはグランドピアノみたいに、音が広がり、本来の音色が発揮できるのですが、お気づきでない方が大半ではないでしょうか。

 

(もっとも私自身、ピアノの上に楽譜を置き散らかしているので、天屋根は開いて弾いてないのですが。)

 

天屋根を開かなくても、譜面台を前に引き出すだけで、それを可能にしたのが、このタイプ。

それだけではありません。

譜面台、すなわち楽譜を置いた位置がグランドピアノとほぼ同じ高さなのがすばらしい!

 

 

ピアノの先生のお宅ではグランドなのに、うちはアップライト。

アクションの構造が違うばかりでなく、じつは楽譜を置く位置がちがうのだから

演奏する姿勢もちがうのです。

 

視線が変われば、背筋ものび、演奏が変わります。

姿勢が変われば、弾き方だけじゃなく、自分の演奏の聴こえ方も変わります。

小さいことのようですが、じつは非常に大事なことだとおもいます。

 

さて、前置きはさておき…

まずは外装の磨き上げから。

パネルごとに外し、表面に付着した汚れを落としてから研磨にはいります。

この譜面台と一体型の上前パネルはばらすのがほんと大変!

慣れてないと、組み立てたあと可動部がスムーズに動きません。

 

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上写真右は、サウンドスケープそのものの部分。

ここに埃が溜まります。 お預かりするときでないと中々分解清掃できませんから徹底的にきれいにします。 ブロワーで埃を吹き飛ばし、洗剤を浸した布巾で汚れをおとし、しばらく天日干し。

 

さて、外装磨きのつづきです。

…といいながら、埃まみれの作業をしつつ写真は撮れないのでちょっと省略。

 

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劣化し、大半が断線してるフレンジコードを張り替えていきます。

 

整調(タッチ調整)を担う作業なので、ここをないがしろにすると、いくらピアノがよくてもその性能・真価を発揮できません。

 

調律や整調の前の土台となる大事な作業。

 

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 アクションのオーバーホールといってもいいとおもいます。

本来はハンマー交換をするまでがオーバーホールというのでしょうけど。

 

この作業をしてるとき、たいてい夕方から夜中に及ぶのですが、一番集中できる私にとってゴールデンタイムです。

 

次回はファイリングと整調をします。

 

 

 

セミ・オーバーホール   ヤマハ・UX5 ①  千葉市 N様

お預かりして、ピアノのクリーニングと整備・調整をおこなっております。

今回はヤマハ・UX5。 

アップライトピアノにして、ソステヌートペダルがあり、堅牢なつくりの最上位モデルです。

 

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背面のX支柱。

 

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しかしよく見ると…… やはり年数相応の傷がちょこちょこあります。 
調律もタッチも狂いに狂い、アクションもごらんのとおり。
が、手心を加えてあげればすぐに蘇ります。

 

さーて、頑張って直すぜ!

よく響くピアノに仕上げまっせ~!

作業中ラジオを聴いていたら

もう半年ちかく前になります。

 

………冬の日曜日、ぼんやりラジオを聴きながら作業をしていると、クラシック曲が流れてきました。

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頼りない日差し

静かで、物憂げで、気だるい日曜日の午後

 

そんな雰囲気にあいまって、

ゆったりとした3拍子のピアノの旋律、

そして、途中から不意に響くフルートの音色。

 

 

黄昏れていく中、思い出を懐かしむようなかんじで、切なくも、どこか狂おしい感情を呼び覚まされるようでした。

 
ラジオから流れる音楽に聞き惚れ、作業を中断してしばらく感動していました。

なかなかこんなことはありません。

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ラベルのピアノコンチェルト・第二楽章でした。

 

 

今日、仕事帰りに寄った楽器店で、楽譜を買ってみました。